《身近なホールのクラシック》2025年度ラインナップに関心をお寄せくださりありがとうございます。《身近なホールのクラシック》とは、大阪府箕面市にて、箕面市立メイプルホールを拠点に展開するクラシック音楽に親しむ様々な機会の総称です。音楽家たちによる一期一会の真剣勝負と記憶に残り続けるステージは、地域住民の皆さまはもとより、多くのクラシック・ファンの皆さまからもご支持をいただき、2025年で9年目を迎えます。これまで大切に育んでまいりました、多くの皆さまとの信頼関係を礎に、文化の土壌がますます豊かになりますよう、共に歩みを進めてまいりたいと思っています。
2025年度のテーマは「冒険心を持って」としました。皆さまにワクワクしていただけますよう、新しい未知のものに好んで取り組む精神や新しいことに挑戦する勇気をもって、一つ一つの企画をお届けいたします。
ファリャ:オペラ「ペドロ親方の人形芝居」-『ドン・キホーテ』に基づくオペラを浄瑠璃人形と共に上演する-
大阪大学とのコラボレーションによる《身近なホールのクラシック》が取り組む、初のオペラ企画です。「ペドロ親方の人形芝居」は20世紀スペイン音楽の傑作の一つですが、人形の扱いなどに困難が多く上演は極めて稀な作品であると言えます。今回は、この難しい課題に、大阪大学の伊東信宏先生と東京2020パラリンピック開会式にも出演されたマイム俳優・演出家いいむろなおきさんのお力添えをいただき、浄瑠璃人形を用いながら、身体表現を駆使した、独自性と創造性の高い上演を目指します。『ドン・キホーテ』の情景の中に、和の人形が出てくるのは明らかに場違いですが、17世紀の民衆的人形劇というつながりを見つけ、「説得力のある混成物」を作り出したいと願っています。
おんがくの寺子屋みのお 室内楽演奏会とオープン・リハーサル
NHK交響楽団首席ヴィオラ奏者の村上淳一郎さんを座長に迎えての「おんがく寺子屋みのお」2年目の取り組みです。昨年は「オープン・リハーサル」のみの開催でしたが、2025年は、リハーサルを経た本番(室内楽演奏会)まで、一筆で企画しました。ヨーロッパの第一線で長く活躍し、現在、拠点を日本に移し、精力的な音楽活動を行う村上さんの箕面での取り組みにご注目ください。この寺子屋は、音楽家自身のステップアップのためだけでなく、聴衆の皆さまが音楽の創作過程から作品づくりを見守り、共に持続可能な音楽創造のあり方を模索していくことを目指しています。
生涯学習講座「リコーダーと音楽史~当事者としての物語の紡ぎ方」
2025年度のテーマを象徴する企画となりました。博士号を持つ音楽家、菅沼起一さんとの初めての取り組みです。菅沼さんは、東京藝術大学音楽学部古楽科(リコーダー)を経て、同大学院修士課程(音楽学)を修了。2018年よりスイスに留学され、バーゼル・スコラ・カントルム(スイス)音楽理論科を経て、フライブルク音楽大学(ドイツ)との共同博士課程を最高点で合格。博士号を取得された気鋭の音楽学者であり、リコーダー奏者です。当初、菅沼さんにはリコーダー演奏も交えて、「古楽」に関する講座を依頼し、それならば!と、「西洋音楽史」を独自の視点で読み解く、今日的な企画が誕生しました。きっと、あなたの好奇心を刺激することうけあいです。レクチャー・コンサートの回では、素晴らしいゲストをお迎えします。
箕面おんがく批評塾 サマー・スクール
「箕面おんがく批評塾」は3年目の取り組みです。市内の公立文化施設を拠点に、地域の活性化に寄与する長期的展望をもって、発展的・継続的に事業を実施し、創造性豊かな地域づくりの推進を図りたいと考えています。3年目は、あえて「シーズン3」とはせず(!?)、夏の短期集中型「サマー・スクール」を企画しました。従来型の年間を通した企画ですと、参加するための時間的なやりくりが難しい…というお声があり、その解決になれば、と考えました。塾長の布施砂丘彦さんは、近年、ますます活躍の場が多岐に渡るとともに、Eテレの音楽番組などへのご出演の機会も増え、クラシック音楽界における新世代の旗手と目される存在になっています。箕面で、布施さんに会える、そんな場を作ってまいります。
「箕面おんがく批評塾」の内容については、WebメディアFREUDE(フロイデ)にてレポートが掲載されていますので、こちらをお読みください。
https://freudemedia.com/feature/minoongakuhihyoujuku
箕面おんがくア・ラ・カルト|指揮者の領分 カーチュン・ウォン
2025年は、大阪フィルとのコラボレーション・シーズンとなります。まずは、大阪フィルの顔である首席奏者の皆さまの室内楽をお楽しみいただきます。フルートとファゴットの組み合わせによるハーモニーは今から興味津々です。ピアノは、2025年2月ワンコイン・コンサート「ピアノ名曲ベストテン」や箕面シニア塾「つながる広がるクラシック」でお馴染みの法貴彩子さんです。そして、私たちが力点を置くオーケストラ公演において、指揮者カーチュン・ウォンさん登場に驚きをもってくださったら、嬉しいです。カーチュン・ウォンさんは、現在、東京(日本フィル)、英国マンチェスター(ハレ管)、独ドレスデン(ドレスデン・フィル)を拠点に世界的に活躍する注目の指揮者であり、大阪フィルとは、2023年3月以来の共演となります。オーケストラの鑑賞機会の少ない地域ホールにおいて、定期演奏会に匹敵するトップクラスの指揮者との本格的なコンサートを開催し、地域の文化振興に寄与するのみならず、オーケストラ活動の底上げ及びオーケストラの将来の財産となる取り組みとなることを目指しています。
《こどもプロジェクト》こどものための音楽ワークショップ「じゆうなおと♪」
次代を担う子どもたちへ。子どもたちにとって「身近な」「遊べる」「楽しい」ホール(生涯学習センター)となるために様々な取り組みを行っています。音楽ワークショップリーダー/ファシリテーターの古橋果林さんを迎えての「音楽であそぶ」2年目の取り組みです。
世界への窓 イゴール・レヴィット ピアノ・リサイタル
世界最高峰のピアニストの一人、イゴール・レヴィットのリサイタルが、首都圏以外で初めて開催されます。レヴィットの2024/25年シーズンは、ウィーン楽友協会、ベルリン・フィルハーモニー、ミラノ・スカラ座、カーネギーホールでのリサイタル。ベルリン国立歌劇場の新音楽総監督に就任したクリスティアン・ティーレマンの就任式、クリーヴランド管弦楽団とヴェルザー=メストとのベートーヴェン・ツィクルス、ブダペスト祝祭管弦楽団とイヴァン・フィッシャーとのプロコフィエフ・ツィクルスといったオーケストラとの共演など、現代を代表するピアニストとしての活動が続きます。身近なホールで世界の響きを体験していただきたく、地域住民の皆さまはもとより、広く、西日本にお住まいのクラシック・ファンの皆さまに大阪・箕面へと足をお運びいただく機会になれば、と願っています。
来年度も《身近なホールのクラシック》へのご来場を心よりお待ちしております。
芸術創造セクションマネージャー 和田大資