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劇団四季ミュージカル『赤毛のアン』レポート② ~合同取材会~

2025 2/11

劇団四季ミュージカル『赤毛のアン』最終通し舞台稽古の後に催された合同取材会の様子をお届けします。
主人公のアン・シャーリー役の林香純さんと、アンを引き取るマシュー・カスバート役の菊池正さんに、演じる役どころや作品の魅力など、盛りだくさんにお話しいただきました。

【合同取材会の様子】
最終通し舞台稽古鑑賞の余韻に浸りつつ、合同インタビューに出席されるアン・シャーリー役の林香純さんとマシュー・カスバート役の菊池正さんが来られるのを待っていました。
予定時刻ちょうどに会場に現れたのは、言葉を選ばずに言うなら「透けてしまいそうなほどの透明感をもつ可憐な女性」と「女性を魅了する渋みをもったイケおじ」。さっきまで舞台上で天真爛漫に走り回っていた女の子と、朴とつな雰囲気だった男性はどこに?俳優さんの凄さを目の当たりにしました。

Q1.2人が演じる役どころについて教えてください。
(アン・シャーリー役(主人公):林香純さん)
アンは空想好きでおしゃべりな女の子ですが、生後3か月で両親がなくなり孤児院で過ごすという厳しい環境で育ちました。そんな厳しい環境でも、想像力を働かせて明るく必死に自分の道を切り拓く強さを持つ、わたしも憧れる女の子です。
(マシュー・カスバート役(アンを孤児院から引き取る男性):菊池正さん)
マシューは一言でいえば口数が少なく、出不精で家に閉じ籠っている役ですが、わたし個人はとてもいい人だと思うんです。最初街のボランティアの婦人がたに悪く言われていますが、「男の子がほしい」と思っていたところにやってきた女の子のアンを、大人の犠牲心をもって「貧しい子を助けたい。」という気持ちで引き取る、そういう「心優しい人」という解釈を持って演じています。

Q2.2人が思うこの作品の見どころ、作品の魅力を教えてください。
(林さん)
アン・シャーリーの成長物語であると同時に、プリンス・エドワード島という島で暮らしている人々の暮らしや自然の美しさというものを描いているところだと思います。9月上旬に実際にカナダのプリンス・エドワード島に行ってきたんですが、写真集などで見て美しい場所だと知っていましたが、実際に行ってみると本当に自然の美しさが素晴らしく、想像を大きく超えるスケールでした。島の人もとても温かくて、暮らしのリズムも都市に住むわたしたちとは違い、こういう島の話なんだなということが良く分かりました。島に昔から住む人のアイランダーとしての誇りを感じましたし、このプリンス・エドワード島の話であることを意識して演じています。
(菊池さん)
ルーシー・M・モンゴメリーの代表作を基にしているので、原作のファンのかたはもちろんですが、そうでないかたも「どんなミュージカルなのかな」と興味をもってもらえることを期待しています。見どころはやはり「アン・シャーリー」だと思います。不思議で魅力的な少女ですよね。明るくおしゃべりなアンが正反対の性格であるマシューとマリラとの出会いによって大きく成長する物語になっています。アンと出会うことでマシューもマリラもどんどん変わっていきます。愛することを知り、愛されることも知る、心温まるストーリーにも注目して見てほしいと思っています。
またダンスと歌も素晴らしく、名曲が揃っています。1幕最後の「アイスクリーム」というナンバーのダンスは山田卓さんの振り付けで、構成も素晴らしく、稽古場でもつくづく「すごいなぁ」と思ってみていました。華やかなダンスも見どころの一つです。

Q3.2人は10年前もこの役を演じられていますが、この度10年ぶりに演じられていかがでしょうか。
(林さん)
2008年から『赤毛のアン』に携わっていますが、ティリー役で初舞台を踏み、『赤毛のアン』はわたしの劇団四季人生の中でも、すごく特別な作品です。入団して3年目でアン役をいただいたので、その時はいっぱいいっぱいで必死で食らいついていくというような状況でしたが、年を重ねて「もう一度トライしたい」と思いが強くあってオーディションに参加しました。本当に毎日幸せだなと思っています。
(菊池さん)
わたしも(林さんの回答と)似ていますね。10年前に劇団の大先輩たちが演じてきたマシューという役をいただいた時には無我夢中でやって気が付いたら終わっていたという印象でした。今は10年経って、ある程度自分でも経験を積んで年を重ね、自分なりのマシューを追求していかなければいけないんだなと感じ、10年前よりは色々考えながらマシューを演じられるようになったと思います。まだまだですがこれからも精進してやっていきます。

Q4.役を演じるときに大事にしていることは何ですか。
(林さん)
劇団四季では「0幕」と呼ぶんですが、役の生い立ちを大事にしています。明るく想像力豊かな女の子ですが、そこばかりになってしまうと、ベースにある悲しみなどの感情が抜けてしまうので、そのベースをしっかり持ったまま演じるということを意識しています。
(菊池さん)
先ほど「0幕」という言葉が出ましたが、前回演じたときは「心臓病を抱えている」「大人の優しさ」といったものを持って演じようと思いすぎたがために、見えてこなかったものがありました。今回もいろいろ考えて演じていますが、「懐の深さ」「孤児院からくる少女と接するデリケートな部分」などをリアルに捉えて演じていきたいなと思っています。

Q5.『赤毛のアン』は原作や舞台、アニメなど様々ありますが、過去の公演や他の媒体を調べたりされますか。
(林さん)
いろんなかたが訳された『赤毛のアン』を読んでいますし、映画やアニメも参考にしています。劇団四季の今までの公演は、以前自分が演じていたものですから、見てしまうとそこをなぞってしまう怖さがあったので逆にあまり見ていません。
(菊池さん)
実写版の映画は見ました。いいところは参考にして取り入れたりはしています。劇団のこれまでの公演は部分的に見たりはしますが、自分なりのマシューを追求したいので、通しでは見ていません。

Q6.お気に入りのシーンやお客様に見てほしいシーンがあれば教えてください。
(菊池さん)
難しいですね…。最初の駅でアンとマシューの出会いのシーンとマシューのラストシーンですかね。
(林さん)
めちゃくちゃ難しいですね。全部です(笑)。もちろんマシューとの別れのシーンはわたしも大好きで、泣かないように必死で我慢しています。あのシーンのために今までやってきたんじゃないかというぐらい大事なシーンだと思います。でもそれだけではなくて、街の人たちの噂で盛り上がる「聞いた?」というナンバーのようなコミカルな感じも『赤毛のアン』らしくて好きです。

Q7.昔の作品ですがどういうところが今の時代の人に響くと思いますか。また林さんはプリンス・エドワード島に行かれたとのことですが、この作品のために行かれたんですか。
(林さん)
プリンス・エドワード島に行ったときに、頭を殴られたような衝撃があったんです。都会で忙しい日々を過ごす中で、島の人がゆったりと地に足が付いた、家族や周りの人を大切にして助け合いながら生きている、そういう暮らしや時間の流れ方が違うと感じました。ささやかで地味かもしれないけど「人間の本当の幸せ」ってこういうことだよなってハッとさせられたんですね。派手なドラマがあるわけではないけど、周りの人も自分も大事にすることは、現代もこれからもすごく大切なことだと思うんです。だから不変的に『赤毛のアン』が世界中の人々に人気なんじゃないかなと思いました。
プリンス・エドワード島は元々『赤毛のアン』という作品が好きで、演じる中で、いつか行ってみたいとずっと思っていました。今回『赤毛のアン』に出演できるかもしれないとなったときにプライベートで行きました。
(菊池さん)
アン・シャーリーが実際にいたらすごく興味湧きますよね。仕事とか現実のことをポーンと忘れてその世界に入ることができる、そういうところが痛快なんだと思います。あとは大自然のローカルな感じも魅力ですね。

Q8.それぞれ公演に向けての意気込みをお願いいたします。
(林さん)
2012年に『赤毛のアン』の全国公演に参加していますが、本当に全国各地でお客さんの反応が全然違うんですよね。笑うタイミングが違ったり、舞台に集中して静かにご覧いただいたり、場所によって反応が違うのことが毎回楽しいです。今回全国公演があることが嬉しくて、全国にお邪魔して、各地のお客さまに会えるのがとても楽しみです。
(菊池さん)
わたしは『赤毛のアン』での全国公演は初めてなのでとても楽しみにしています。原作ファンのかたはもちろんのこと、初めてのかたもアン・シャーリーの魅力や歌、ダンス、音楽、笑いあり涙ありのこのヒューマンドラマを思う存分楽しんでもらいたいなと思います。

【合同取材会を終えて】
合同インタビューの会場にお2人が現れたときは、役との印象の違いに驚きましたが、お話をお伺いしていると、林さんは芯の強さとチャーミングな笑顔が、菊池さんは会場のわたしたちを気遣う優しさが、それぞれの役に共通していると感じました。

原作にファンがいればいるほど、実写化や舞台化は難しいと言われています。ファンの数だけ「自分なりの主人公」「自分なりのストーリーの解釈」が心に存在するからです。かく言うわたしも原作のファンで、あの多数のエピソードをどのようにして3時間弱の舞台に仕上げているのか、内心訝しんだ気持ちを持ちつつ今回の合同取材会に臨みました。
しかしながら実際は超一流の歌とダンスとともに複数のエピソードが贅沢に盛り込まれた、原作にリスペクトを感じる素晴らしい舞台でした。
原作ファンはこのミュージカルで新たなアンに出会い、プリンス・エドワード島の世界に没入することができ、『赤毛のアン』を知らない人はチャーミングなアンという女の子の成長と取り巻く人々とのヒューマンドラマを存分に楽しむことができると思います。
全国を巡演し、今後さらに魅力に磨きがかかっていくこちらの舞台、5月の箕面公演では計り知れない感動を皆さまにお届けすることができると確信しています。ぜひ今後の情報をお見逃しなく!

チーフコーディネーター 下元温美

【劇団四季ミュージカル『赤毛のアン』レポート① ~最終通し稽古~】

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